【噀酒仙人】欒巴|ヒト
中国では道教の思想に由来する個性豊かな仙人たちが数多く語り継がれています。
西晋・東晋時代の葛洪が記したとされる「神仙伝」からひとり面白いエピソードを持つ「欒巴」という仙人を紹介したいと思います。
宦官としての経歴
欒巴は中国後漢時代、三国志の時代の少し前の時代に活躍した宦官です。若い頃より道学を好んで、俗事にあまり携わりませんでしたが、順帝の時に宦官として後宮に仕えました。宦官としては実直に仕事をこなし、官吏や民衆のために学校を建てるなどの業績を残しており、官吏として着実に出世していきました。しかし、朝廷での権力争いに巻き込まれ、左遷や投獄を経験し、最後は霊帝の怒りを買い、自殺を賜わうこととなってしまいました。
仙人エピソード
以上が歴史上の欒巴についてです。彼が道学を好んだためか、死後に色々話が盛られ、虎に姿を変える話や妖怪退治の話など超人的な存在として語られていきました。その中でひとつ面白いエピソードを紹介します。
欒巴が尚書郎(尚書は朝廷の文書・詔勅を取り扱ったところ)になった頃、正月元旦の大宴会に、遅刻して現れ、しかも酔っ払っていました。百官に酒が下賜されると、今度はそれを飲まずに、口に含んで西南の方角へと吹き出しました。係官が欒巴の不敬を上奏し、皇帝が欒巴に理由を尋ねました。すると欒巴は「私の故郷である成都の市中に火事があったため、あのように酒を含んで火を消したのです。あえて不敬を働いたのではありません。何卒お調べいただき、もし偽りならば罪に問うてください。」と言いました。そこで成都に早馬を立てて報告させました。報告には「正月元旦に火事がありましたが、程なくして東北(都の方角)より大雨が降り、火はやがて消えました。また、その雨はことごとく酒の匂いがしました。」とあった。
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